地域適応策を支援する社会技術

ステークホルダーインタビューを通じた気候変動影響の抽出
―滋賀県高島市を対象として―

滋賀県琵琶湖環境科学研究センター 木村道徳

気候変動の影響は、地理的、社会的な地域特性によって影響が大幅に変わると考えられます。地域社会において、気候変動の適応に向けた事業や取組を進めていくためには、まず地域社会で地域特性を考慮した気候変動影響を評価することが求められます。しかし、気候変動影響を科学的に評価することは、長期に渡る専門家による調査分析が必要となります。

このようなことから、地域レベルで気候変動影響を比較的容易に把握するために、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターは、県民および気候変動影響を受けると考えられる分野のステークホルダーを対象としたインタビュー調査やワークショップを行い、得られた議事録をテキストマイニングにより分析することで、地域で顕在化しつつある気候変動影響を把握するための手法の開発をおこなっています。

2017年度に滋賀県高島市のまちづくりステークホルダーを対象に、同手法を用いた調査分析を行ないました。得られた議事録をもとにテキストマイニングを実施し、階層クラスター分析や気候変動適応計画(平成30年11月27日閣議決定)で整理されている分野を参考にトピックスの抽出を行い、トピックス間の共起関係をネットワークグラフとして可視化した結果を図に示します。結果、滋賀県高島市のまちづくりステークホルダーにおいては、「少子高齢化人口減少」、「産業・経済活動」、「まちづくり・地域コミュニティ」、「教育・子育て」など、地域のまちづくりや地域社会課題についての関心が高く、トピックス間で共起関係ネットワークを形成していますが、「土砂災害」や「水害」などの災害分野、「水環境」や「水資源」などの水分野、「森林・林業」や「農業」、「陸域生態系」自然生態環境分野との間の共起関係は薄く、十分なネットワークは形成されていないと考えられます。

地域社会の政策や事業、取組の多くは、まちづくりの文脈にておこなわれていることが多いです。適応策においても、市民生活レベルでの社会実装を進めるにあたり、まちづくりの考え方や施策とのネットワーク形成が必要であると考えられます。今後は、そのための方法論の確立に向けた調査研究をおこなっていく予定です。

滋賀県高島市まちづくりステークホルダーの関心トピックス共起ネットワーク

図 滋賀県高島市まちづくりステークホルダーの関心トピックス共起ネットワーク

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