地域適応策を支援する社会技術

熟議型ステークホルダー対話手法による地域適応シナリオづくり その2

岐阜県の長良川流域における気候変動に対する地域適応シナリオ作成においては、これまで関係者・関係団体(ステークホルダー)に対するインタビューを実施し、得られたデータをテキストマイニングにより利害関心の分析を行い、「自然災害」「長良川の漁業、アユ、漁師」「これからの仕事、地域との協働」の3つのテーマと37の関心項目を明らかにしました。

更に、インタビューから得られた現場知に対して、専門家による判断(専門知)を得るために2回のデルファイ調査を実施しました。デルファイ調査では①なりゆき未来(このまま何もしなかった場合に訪れる未来)の起こる可能性、②なりゆき未来が社会に悪影響を及ぼす可能性、③理想的な未来への適応行動の妥当性、④理想的な未来への適応行動の実現可能性、の4項目に対して5段階で評価を依頼し、理想的な未来の実現のための課題や方策のヒントを自由記述により収集しました。各テーマ3名の専門家にデルファイ調査を依頼、得られた回答を集計し、起こり得る可能性が高く、かつ社会に悪影響を及ぼす可能性の高いなりゆき未来、理想的な未来の実現に向け妥当性が高く、かつ実現可能性が高い適応行動を抽出し、3つのテーマそれぞれに対する地域適応シナリオを作成しました。岐阜県においては、気候変動と共に、人口減少や少子高齢化などの社会変化が自然災害に対する防災の取り組み、長良川の漁業を中心とする地場産業の継続など、将来の県民の暮らしに大きな影響を与えることが予想されます。こうした懸念に対して、それぞれの当事者が理想的な未来の実現に向け何をしなければいけないのかを地域適応シナリオでは示しています。

また地域適応シナリオの一部は、気候変動における特に水災害への備えを啓発する「安心な暮らしのためのヒントBOOK@ぎふ」(清流の国ぎふ防災・減災センター発行)でも紹介しています。気候変動適応に向けた議論と社会実装が促進されることが期待されます。

図:地域適応シナリオの成果を県民に周知する取り組みを支援「安心な暮らしのヒントBOOK@ぎふ」より

図:地域適応シナリオの成果を県民に周知する取り組みを支援
「安心な暮らしのヒントBOOK@ぎふ」より(清流の国ぎふ防災・減災センター発行:2020年1月)

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