地域適応策を支援する社会技術

気候変動に対する態度から情報提供の対象を明確化する-5Japanese

小杉 素子(静岡大学大学院総合科学研究科 特任准教授)

内閣府の世論調査によれば、地球温暖化(気候変動)に関心があると回答する人の割合はここ20年ほど常に8割を超えています。しかし、それが自分の生活にどのような影響を及ぼすのか、どのような対策があるのについては十分に理解されているとは言えません。そこで、地球温暖化リスクに対する人々の理解を深め、対処行動を促進するためにどのような情報提供方策が有効であるのかを検討しようとしています。

まず、日本人が地球温暖化をどのように理解しているのかを把握するため、回答者属性が日本人の人口構成に近似するようにオンラインでの質問紙調査を行いました。その結果、地球温暖化リスクに対する知識や態度の特徴から、日本人を5種類のクラスターに分類できることが分かりました。地球温暖化に関心が乏しく明確な意見を持たないクラスターが最も大きく、日本人の45%程度がこのクラスターにあたります。次に大きいのがリスク認知や不安感が高く、地球温暖化対策の様々な施策に肯定的な態度を持つクラスター(38%程度)です。また4%弱と割合いは小さいですが、地球温暖化に対して懐疑的で対策の必要性を感じていないクラスターも存在します。残りの2種類は、地球温暖化に関する様々な記述に全体的に肯定的なクラスターと、全体的に否定的なクラスターです。いずれのクラスターも、個々の記述内容に一貫した態度で反応している訳ではないので、明確な態度を持たないという意味では地球温暖化に強い関心がないと解釈できます。

このように地球温暖化について異なる知識や態度を持つ人々に対しては、単一の情報を同じように提供するのではなく、それぞれに適した情報内容を取捨選択し、提供する内容やターゲットとする相手に適した媒体を選別することが必要です。情報提供方策を検討する上では、人数の多い無関心なクラスターが第一ターゲットと考えられ、彼らにとって地球温暖化に関心を持つきっかけとなる事象は何か、よくアクセスする情報媒体は何かなどを把握する必要があります。また、数は少なくても、地球温暖化に懐疑的な人々が持つ知識や理解の仕方を把握し、誤解や混乱を招かないような情報内容を工夫することも重要です。今後は、各クラスターの人々の知識や理解の仕方、情報環境などについて詳細に把握し、それに基づいた提供情報のカスタマイズを行っていきます。

摘出した5つのクラスター

5つのクラスター

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