地域適応策を支援する社会技術

市民参画による将来像作成における情報共有支援
―滋賀県高島市を対象として―

気候変動への適応の取り組みを地域で進めていくためには、地域の多様なステークホルダーの協働が不可欠です。そのための第一段階として、法政大学では気候変動や社会変動に適応した望ましい将来社会像のステークホルダー参画による作成の支援に取り組んでいます。ここでは、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターや大阪大学などの研究機関・大学と共に取り組んでいる滋賀県高島市の事例についてご紹介します。

望ましい将来社会像を議論するためには、行政や市民団体が取り組んでいる事業や活動、目指している将来ビジョンなどを市民の間で共有する必要があります。これらの情報を集めるために、法政大学は同市において気候変動やまちづくり、市民活動に関連する行政14課と市民団体、事業者20団体の計34団体に対して、①目指している高島市の将来ビジョン、②事業・活動を通して感じている課題、③課題の解決や将来ビジョンの実現に向けた事業・活動などを尋ねるインタビュー調査を実施しました。ただし、これらの結果を市民の間で共有するのは困難です。そこでテキストマイニングの技術を活用して結果を整理・可視化し、情報共有の支援として図のように提示しました。図ではインタビュー調査の対象とした市民団体や事業者をA〜T、行政各課をa〜n課の赤字で、対象団体が発言した単語を黒字で示しており、それらの距離が近ければ近いほど関係が強いことを表しています。また、関連性が深いと考えられるキーワードをグルーピングして色を重ねて示しています。

この図からは、各団体がどのようなことに問題意識を持っているか、取り組んでいるかを推察することができます。たとえば、図の左上部には子どもや高齢者の居場所づくり、移動支援に関する語が配置され、A〜D、a課などによって取り組まれていることが読み取れます。同様に図の右下部を見てみると、山の手入れや林業、再生可能エネルギーに関する語が配置されており、これらはl〜n課やR〜Tなどの団体によって言及されたことが読み取れます。

この図だけでインタビュー調査の対象団体が持つ問題意識や将来像などすべての情報を詳細に把握することはできませんが、各団体がどのような問題意識でどのような活動に取り組んでいるのか、どの団体とどの団体が類似した活動に取り組んでいるのかなどを視覚的に把握する際に活用することができます。情報共有の支援を目指した、いわばとっかかりのキーワードマップです。

テキストマイニングを用いたインタビュー調査結果の整理

図 テキストマイニングを用いたインタビュー調査結果の整理

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