地域適応策を支援する社会技術

気候変動適応策の社会実装化への試みとしてのロールプレイシミュレーション

気候変動のような長期的なリスクは、どうしても他人事になりがちです。これを「自分事」として捉え、人々の適応策への受容性や協力行動を高めたりするには何が必要でしょうか? 以下では、そのようなアプローチの1つとしてロールプレイシミュレーションをご紹介します。図は、米国ニューイングランド地方において気候変動適応策を題材としてロールプレイシミュレーションが実施された事例を示しています。ここでステークホルダーアセスメントは、「地域適応シナリオ」のご紹介でも触れた関係者への聞き取り調査で、リスクアセスメントは、専門家による気候モデルや影響評価に相当します。

このような情報をベースとして、気候の変化やその影響としての海面上昇等と、一般市民や州・連邦政府、企業経営者、環境団体等6類型の関係者が持つ利害や態度が描写されたロールプレイシナリオが作成され、実際の関係者が、シナリオをベースとしながら、とるべき適応策について議論を行いました。得られた主な成果として、議論や終了後の振り返りを通じて他者の考えを知ることにより参加者の視野が広がったこと、気候変動を地域の視点や文脈で捉えることが可能となり、参加者が実際に居住する地域での責任感や行動意識が向上し、地域での気候変動適応策が重要であると認識したことなどが挙げられています。

このような手法は、国内では風力発電立地問題等に適用されてきており、気候変動適応策についても適用し、「自分事」化を進めるアプローチの1つとしていく予定です。

ニューイングランド気候変動適応プロジェクトにおけるロールプレイシミュレーションの位置づけ

図 ニューイングランド気候変動適応プロジェクトにおけるロールプレイシミュレーションの位置づけ

*なお、紹介した事例の詳細は、馬場健司・吉川真珠美・大塚隆志・五十部有紀・田中充、気候変動適応策の社会実装化への試みとしてのロールプレイシミュレーション-米国ニューイングランド地方での事例からの示唆-、『環境科学会誌』Vol. 31 No.2、2018 (印刷中) https://www.jstage.jst.go.jp/browse/sesj/-char/ja でご覧いただけます。

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