地域適応策の取組事例

長野県高森町における市田柿の適応策の検討その3

適応策の検討には、気候変動の将来予測データをもとにしたトップダウン・アプローチと地域の住民や事業者の主体的取組みを促すボトムアップ・アクションの2つの方法があります。前者は、気候変動の影響と適応策に関する専門知(将来予測等)を起点として、地方公共団体内での適応策の必要性の学習と既存施策の整理等を検討の手始めとします。

後者はコミュニティ・ベースド・アダプテーション(Community Based Adaptation)ともいわれます。CBAは、適応策の実施主体となる自治体職員や地域住民、地元企業等の地域主体が持つ気候変動の地域への影響や適応策に関する知識(「地域主体が持つ現場知」)を起点とし、それを共有し、理解や行動意図を高めた地域主体が適応策の立案や実践に参加し、地域主体が自らの適応能力(気候変動適応に対する具体的な知識や備え)を高めていくプロセスです。

CBAの実践例は国内にほとんどない中、長野県高森町では、市田柿という地域固有資源に着目したCBAの検討を行ない、2019年8月に「将来の気候変動を見通した市田柿の適応策」を策定しました。町村としての計画、事業協定による町村と大学との連携、地域固有資源に着目した適応、農家等の地域主体との協働といった各々の点で、日本国内初の適応計画となりました。

同計画に示された重点アクションを表に示します。技術の開発と普及に留まらず、技術普及を可能とする経営基盤の強化、市田柿を活かす地域のあり方等を見通した点で、気候変動適応策のあるべき枠組みを示した内容となっています。

表 重点的に取り組む市田柿の適応策

大分類 中分類 小分類 時期の方針
1柿の栽培・ 加工技術の改善 1.1 生柿の栽培の改善 1.1.1 従来の栽培技術の改善 中長期を先取りする新たな方法の開発・試行による備え
1.1.2 革新的な栽培技術の開発・導入
1.2 干柿の加工の改善 1.2.2 革新的な加工技術の開発・導入
1.3 技術の蓄積・共有 1.3.1 生産・加工技術の共有 当面の高温化に対する従来の対策の強化と改善・普及
1.3.2 経営規模を考慮した情報の共有
2生産・経営形態の改善 2.2 生産・出荷の共同化 2.2.1 会社組織による共同加工・共同経営 中長期的な先を見越した基盤づくりの漸進
2.2.2 農家間での共同での加工・経営・出荷
2.3 新たなビジネスモデルの構築 2.3.3 より買ってもらい易い商品開発
3 市田柿を活かす地域づくり 3.1 高森での体験の工夫 3.1.2 高森に来て、食べてもらう工夫
3.3 若手生産者への支援 

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