地域適応策の取組事例

神奈川県相模原市藤野地区での住民主導の適応策の検討

藤野(神奈川県相模原市)において、NPO法人ふじの里山クラブと法政大学が協働し、同クラブのメンバーが、気候変動の影響を調べ、学習し、適応行動を検討する活動を行っています。この活動は、地域住民が主体となって、気候変動の地域への影響を調べ、住民一人ひとりと協働で行う適応アクションを立ち上げることを狙いとしたものであり、住民主導で適応策を検討する日本初の試みです。 以下、これまでの検討経緯を紹介します。計画を策定するだけでなく、さらにアクションの立ち上げを目指していく途中です。

影響事例調査(2016年4月)

気候変動への適応について学んだふじの里山クラブのメンバーが、2016年4月に地域における気候変動に関する影響事例を調査しました。その結果、10名から43事例が報告されました。

第1回ワークショップ影響事例の評価(2016年11月13日 参加者13名)

ふじの里山クラブのメンバーが収集した影響事例を分野や項目で整理し、将来予測結果のデータ等を学習したうえで、重大性、緊急性、確実性の3つの側面から評価しました。

第2回ワークショップ優先度の検討(2017年1月22日 参加者11名)

1回目の評価に基づき、優先度の高い影響項目を話し合いました。その結果、「①集中豪雨による土石流、鉄砲水、沢の崩壊」、「②鹿、猪、猿による被害(耕作放棄等)、熊の出没」、「③猛暑による健康保持の難しさ」の3つが優先度の高い影響項目となりました(表参照)。さらに、優先度の高い3つの影響項目について、一人ひとりで行う適応行動、協働で行う適応プロジェクトについて話し合いを行いました。

第3回ワークショップ行政への要望の検討(2017年3月19日 参加者10名)

これまでの進め方や結果を確認し、優先度の高い3つの影響項目への行動やプロジェクトについて追加する項目を検討しました。次に優先度の高い3つの影響項目について行政への要望を検討しました。

「気候変動の藤野学」シンポジウム活動報告と意見交換(2017年11月24日 参加者33名)

気象キャスターと法政大学の基調講演、これまでのワークショップの活動報告、相模原市環境政策課、地元で活動している方々とのパネルディスカッションを行いました。活発な意見交換がなされ、住民と行政が一緒になって適応策を考え、立ち上げていくという次のステップが共有されました。

「気候変動の藤野学」シンポジウムの様子

写真 「気候変動の藤野学」シンポジウムの様子

表 優先度の高い影響項目

分野 大項目 小項目 重大性 緊急性 確実性
1 水・土砂災害/水災害 災害 集中豪雨による土石流、鉄砲水、沢の崩壊
保水力低下による増水    
資源 雨が降らない時の水不足    
2 自然生態系 植物 花の開花時期のズレ(梅、フクジュソウ等)    
動物 鹿、猪、猿による被害(耕作放棄等)  
熊の出没  
ヤマビル増加  
デンブチョウの異常発生    
野鳥の種類が変化    
3 農業 天候不順による不作(暖冬化によって大根の味が落ちる等  
害虫による被害    
4 健康 猛暑による健康保持の難しさ
蚊の生息期間が長くなった  
5 生活/産業 生活 低気圧による精神状態の悪影響    
電気使用量の増加    
雪の量や質の変化  
産業 イベントが組みづらくなった  

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