地域適応策の取組事例

長野県高森町における市田柿の適応策の検討

長野県高森町では、2017年に「気候変動の市田柿への影響と適応策に関する研究」について法政大学と協定を締結しました。この締結理由にあるように、高森町では、安定的な市田柿生産の一助と先行的な競争力やブランド力の向上につながるとして、適応策の検討を能動的に捉えています。

もともと高森町では、2012年に「高森町市田柿振興計画」の中で干し柿加工期の気温上昇による発酵果やカビ果の発生を課題として捉え、対策を検討していました。このため、法政大学の研究について、高森町産業課の受入と協力が得られました。

事業協定により、1.適応策のアクションプラン検討のためのワークショップの開催、2.適応策アクションプランの作成とシンポジウムの開催、3.適応策の地域向け啓発のための映像ツールの作成、4.適応策のアクションのためのツール開発と試行を進めているところです。

市田柿について、生産の概況と気候変動との関係を説明します。

市田柿は高森町の市田地区が発祥であり、現在では南信州(飯田・下伊那地方)の特産品となっています。市田柿は、2006年に地域ブランドに認定されました(特許庁の地域団体商標登録制度)。2007年には、「市田柿ブランド推進協議会」が設立され、市田柿の基準の設定、研修会や衛生管理の徹底、PR活動が活発に行われてきました。高森町でも、町商工会オリジナルの市田柿ギフト販売や、「市田柿の由来研究委員会」の発足、高森町歴史民俗資料館の特別展「市田柿発祥の里」開催と、市田柿を活かす地域活動が行われています。2016年には、みなみ信州農業協同組合を登録生産者団体として、市田柿が地理的表示(GI)保護制度に登録されました。地理的表示保護制度(GI)は特産品の名称を品質の基準とともに国に登録し、知的財産として保護するものです。

この市田柿は、小ぶりで高糖度、早熟であり、干柿となるとあめ色(サーモンピンク)で、もっちりとやわらか、肌理の細かさが特徴です。糖分が外にふきだし、白い粉化粧のようです。バターやクリームチーズとの相性もよく、ワインにも合う食材です。

全国の2014年の干柿出荷量5,371tのうち市田柿は44%(2,366t)を占め、その市田柿のうち99.9%が長野県です(特産果樹生産動態等調査による)。また、市田柿出荷量のうち14%が高森町です。南信州は気候が比較的温暖であり、天竜川沿いの河岸段丘地帯に発生する朝霧が質の良い干柿の生産に適しているとされています。

重要な地域資源である市田柿ですが、生柿の生産、干柿への加工ともに気候条件の変化の影響を受けやすいです。気候条件の変化の影響としては、秋の気温上昇によるカビの発生が深刻です。また、春先の凍霜害、生柿の収穫時期の早期化、雹の被害等が気候変動により深刻化しています。

現在までに、関係主体へのインタビュー調査、農家へのアンケート調査、地域農家によるワークショップによる地域ぐるみの適応アクションの検討を行っています。さらに、適応アクションの具体化と実践に向けた検討を進める予定です。


関連リンク:高森町のホームページ
「気候変動の市田柿への影響と適応策に関する研究」について法政大学と協定を締結しました

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