地域適応策の取組事例

北海道北見地域での「雪踏み」

北海道の道東地域では、冬に土が凍る深さが浅くなってきています。これは降雪のパターンが変化し、これまでより雪が多く積もるようになってきたことが原因です。つまり、雪が断熱材となり、冬の低温が地面に伝わりにくくしています。

北海道の道東、北見を中心とする地域では、気候の変化とは逆に、冬場に積極的に土を凍らせることで、土質の改善などを狙った技術の普及に取り組んでいます。

この地域での土壌凍結は、主に「雪踏み」と呼ばれる手法で行われています。これはトラクター後方に連結した鎮圧ローラーで積雪を押しつぶす、すなわち「雪を踏む」ことで、雪の熱伝導率を上げる技術です。この地域では、冬の気温は氷点下20度以下になることも珍しくありません。踏み固められた雪を通じて冬の低温を土に伝え、土を凍らせているのです。

雪踏みをすることで何が良くなるのでしょうか? 冬に土が凍った後、春にその土が溶けると、土のかたまりがバラバラになり、バラバラになった土がサラサラになります。この地域で雪踏みが受け入れられた最大の理由は、土壌の砕土性の向上にあります。地元では、土の「こなれ」が良くなると表現しています。

雪踏みの実施により、土のかたまりが少なくなり春先の畑の整地が行いやすくなりました。土がサラサラになることでトラクターが走行しやすくなり、春は作業時間も燃料代も大幅に減少しました。秋の収穫時の土塊混入判定作業も作業負担が軽減されました。そして、一番心配された春の作業開始時期の遅れも、十分許容範囲に収っています。

このように「雪踏み」による冬の短時間の機械作業は、通年の農作業の生産性を大きく向上させています。

気候の変化を考慮した先駆者の取り組みは、この地域に急速に広まっています。2016年春季の訪問調査では、雪踏みの実施面積が1年間で約3倍に増加しているということでした。

PAGE TOP